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夏山シーズン 2010.7.9

安全最優先で登りたい

 梅雨が明ければ本格的な夏山シーズンを迎える。今年はどの山に登ろうかと計画を練っている人も多いだろう。ただ、昨年7月に北海道の大雪山系トムラウシ山で夏山史上最悪の遭難事故が起きたことを思い起こしてほしい。事故の教訓をあらためて確認し、安全最優先の登山を心掛けたい。

 この事故では、旅行会社が募集したツアー登山の一行18人のうち、リーダーのガイド1人を含む8人が凍死した。登山は資料調べなどの計画づくりから始まるが、ツアー登山はこうした手間を業者側が請け負うため登山客は気軽に参加できる。中高年を中心に人気を集め、急成長した新しい登山スタイルだ。

 日本山岳ガイド協会の特別委員会が今年2月にまとめた事故調査最終報告書は、ツアー登山に潜む危険性を明らかにし、警鐘を鳴らしている。事故の主因について「悪天候の遭遇によるものではなく、ガイドの判断ミス」とした上で、営利優先になりがちな会社側の危機管理体制の不備などを指摘した。

 報告書は協会のホームページで公開されており、夏山登山を計画中の人はぜひ読んでおきたい。「百名山などいたずらにピーク(登頂)をコレクションせずに経験や知恵を付けることも山の面白みであることを実感してほしい」など参加者への提言もある。登山の基本や心構えを再確認する上でも参考になる。

 昨年末、観光庁がツアー登山を扱う旅行会社を対象に実施した調査によれば、添乗員やガイド向けの対応マニュアルを「作成していない」との回答が3分の1に上った。業界全体に事故の教訓を生かそうという姿勢が感じられないのは残念だ。

 ツアー登山には事故率が低いメリットもある。ただ、例えば募集パンフレットからリスクを読み取るのは難しい。安全対策の強化などがどの程度進んだのか、参加者自身が会社に問い合わせ、見極めることが何より大切である。

 昨年、全国で起きた山岳遭難事故は1676件、死者・行方不明者は317人で、ともに増加傾向にある。遭難者数も前年より152人増え、過去最悪の2085人を数えた。

 「第二のトムラウシ」を防ぐために、未組織登山者層の増加やガイド育成の遅れといった登山界の課題にも前向きに取り組んでいかなければならない。(神奈川新聞社説から転載)

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