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山岳トイレ整備 2010.8.2

補助廃止は時期尚早だ

 山小屋のトイレ整備などを支援する環境省の補助制度が行政事業レビューで「廃止」と判定され、議論を呼んでいる。税金の無駄をなくす民主党政権の施策は評価できるが、山岳環境の改善がいまだ十分とは言えない現状で制度をなくすことは、時期尚早と言わざるを得ない。

 6月に実施された行政事業レビューは、省庁版の事業仕分けに相当する。省ごとに2009年度予算の執行状況について有識者から意見を聞き、その結果を11年度の予算編成に反映させる新たな仕組みだ。

 廃止とされたのは、「山岳環境等浄化・安全対策緊急事業費補助」。地下浸透や放流処理が大半だった山小屋のトイレが沢水を汚染し、生態系へ悪影響を及ぼすとされ、同省が1999年度に創設した。民間や自治体による1千万円以上の整備に500万円を補助する。

 同省によれば、対象は全国約200カ所とされ、これまでに約半数がオガクズを混ぜて汚物を分解する「バイオトイレ」などの環境配慮型に改修された。改修時にはヘリコプターで資材を運ぶため費用が割高になり、補助要望は多いという。

 レビューでは「使用料を徴収し費用に回すべき」「受益者、汚染者負担が原則」との指摘が聞かれ、山小屋間で整備を競わせるよう求める声もあった。登山者の安全確保などを担う山小屋の役割や深刻な環境悪化を理解した意見とは思えない。

 同省は廃止の判定を受け、有識者からなる組織を7月に設置し代替策の検討を始めた。「利用者が少ない山小屋は改修できない」「環境改善の取り組みに水を差す」といった初会合で出された批判は当然だろう。8月末の11年度予算の概算要求までに方向性を出すとしているが、慎重に議論してもらいたい。

 山岳環境悪化の背景には、特定の山域に登山者が一時期に集中するオーバーユース(過剰利用)がある。登山道の荒廃や植生破壊の原因でもあり、中高年の登山ブームに整備や保護が追い付いていないのが実情だ。

 維持管理費の負担も大きい。100円程度のチップ制が普及しているが、それだけでは費用を賄い切れない。トイレットペーパーの分別回収といった利用者のマナー向上も求められる。夏山シーズンが本番を迎えた。現場の状況を把握した上で、今なすべきことを考えたい。 (神奈川新聞 社説から転載)

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