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クマ出没 保護に向けた抜本策を 2010.10.27

 10月27日付けの神奈川新聞社説に「クマ出没 保護に向けた抜本策を」との記事が掲載されていた。

 県内をはじめ全国各地でクマの出没が相次いでいる。目撃件数は昨年を大幅に上回り、人的被害も84人(4~9月)を数える。最近では2006年度にやはりクマが大量に出没し問題になった。しっかりと背景を調べた上で抜本的な対策を講じる必要がある。

 「民家や介護施設に侵入し、人を襲う」「小学校近くに現れたため臨時休校となり、周辺住民も避難」―。クマに関する記事が連日報じられている。異常事態と言っていいだろう。県内では今年、10月21日までに26件の目撃情報があった。件数は既に09年度1年間の17件を超え、06年度の33件に迫る勢いだ。

 厚木市内ではツキノワグマ1頭が3年ぶりに捕獲された。今のところ県内で人的な被害はないが、クマは冬眠に備えて11月下旬ごろまで活発に行動する。紅葉シーズンとも重なり丹沢山系は登山者が増える。地元自治体は出没情報や対処法をインターネットで公開し、注意を呼び掛けている。警戒を怠らないように入山したい。

 県が06~08年度に実施した調査によれば、丹沢山系を中心にツキノワグマ約35頭(推定)が生息。ツキノワグマは絶滅危惧(きぐ)種のため、県は原則としてオリなどで捕獲した後は奥山に放している。登山道で人と鉢合わせしたクマが驚き、かみつくといった事例も少なくない。被害を防ぐには生息数を正確につかんで行動パターンを解明、出没を予測するといった保護態勢の強化が求められよう。

 クマの出没が目立つ背景には諸説ある。まず夏の猛暑に樹木の凶作周期が重なり餌のドングリが減少したこと。また奥山と人里との緩衝帯だった里山が過疎化などで荒廃したり、高齢化で猟師や林業従事者が減りクマが人を恐れなくなった事情も挙げられている。さらに耕作放棄地が増え、市街地のすぐそばでも身を隠せる場所ができた。もちろん、生息数自体が増えていると指摘する専門家もいる。

 クマ以外でも農作物を食い荒らすイノシシやサル、シカの食害が深刻だ。関東地方知事会は対策会議を設け、効果的な駆除や共存に向けた調査・研究を検討することを決めた。里山に牛を放牧し、クマなどが隠れやすい草を食べさせる取り組みもなされてはいるが、まだ試行段階だ。自治体間で連携し、有効な対策を見いだしたい。(10月27日付け神奈川新聞から転載)

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