ランニングが脳に及ぼす効用 2012.7.20
7月20日付の日本経済新聞朝刊に「能力アップ走って実感 高まる集中/認知症予防も期待」との記事が掲載されていた。
世界的のトレイルランナーの鏑木毅さんも次のように語っている。
「いろんなイメージを形成するには、走るのが一番。走ると前向きな気持ちになる。何かをしなければならないのにどうしようと迷っているとき、走りに行くと踏ん張りがきく。生活をいい流れに持っていくにはランニングが効く。走ると生活がリセットされる。レース前に緊張しているときも、走れば不安が取り除かれる。」
一方、筑波大人間総合科学研究科の征矢(そや)英昭教授によると、激しいトレーニングを長い間続けていると、副腎からコルチゾールというホルモンが出続け、脳にマイナスの影響を与えるとのこと。海馬が小さくなり、慢性疲労の状態になるそうである。運動によりストレスを引き起こし、免疫力や生殖機能が低下したり、脳の機能が落ちて、鬱になったり、認知症のような症状が出ることをあるので注意が必要とのこと。
(以下、日本経済新聞の記事から転載。)
ランニングをすると頭がさえ、考えがまとまった経験を持つランナーは多いだろう。それは気のせいではなく、脳の神経回路の活性化によってもたらされた現象だ。走ると、心肺機能や脚力が高まるだけでなく、脳の機能もアップすることが証明されている。ランニングは脳にいい。そのメカニズムを筑波大人間総合科学研究科の征矢(そや)英昭教授の論文などをもとにまとめると――。
わずか10分でも、ジョギングなどの軽度の運動をすると、頭がすっきりし、仕事がはかどる。「まさか」と思うだろうが、すでに脳科学によって証明されている。
征矢教授らは2009年、20人の学生を対象に、10分間の運動の前後と、安静にしていた前後に認知機能を測定する実験を行った。
運動実験では、最大酸素摂取量の50%の強度で10分間、自転車のペダルをこいだ後、15分間、安静にした。一方、安静実験では25分間、安静を保った。
認知機能の測定に使ったのはストループテストと呼ばれるもの。パソコンの画面に2つの単語を表示し、上に書かれた文字の色と、下の文字の意味が一致しているかどうかを判断させる。
たとえば上に赤い字で「あお」と書かれている。下の文字は「あお」。この場合は「異なる」が正解だ。しかし、人間は文字の意味を認識しがちなため、意味に惑わされず、瞬時に色を判断するのはなかなか難しい。
このテストを25分間の実験前後に課したところ、統計的に運動した後の成績が上がっていた。
さらに、実験後に脳活動がどの領域で高まっているかを測定した。その結果、運動した後は左脳の前頭前野背外側部(ブロードマンの46野)が活性化していることが分かった。
この46野は対立した考えを区別したり、現在の行動により未来にどんな結果が出るかを類推したりする作業にかかわっている。つまり、ここが活性化すると類推、選択、判断の機能が上がる。
すべてが生活、仕事にかかわるものだ。勤務中に仕事力が低下したと思ったら、10分休みをとって、軽く走るだけで効果があるという。
46野は注意、集中、メモリー機能にもかかわるため、活動が低下すると認知症、自閉症、鬱病を患う危険性がある。運動による46野への刺激が認知症などの予防になるのではと期待されている。
ランニングなどの軽い運動をすると、脳内の海馬が活性化することも分かっている。海馬は学習、記憶にかかわる部位で、ここが損なわれると、その日やったことが思い出せなくなる。
ネズミを使った実験では、運動をさせると、海馬の神経回路が活性化し、海馬が大きくなることが分かっている。週5回の運動を6週間続けると、新たな神経が生まれ海馬が太り始める。
ここが活性化すると、本能的な欲求が抑制され、認知機能が高まる。高齢者でも半年~1年走ると効果が表れる。
面白いことに、運動の強度によって脳の刺激される部位は変わる。最大酸素摂取量の50~60%の強度の運動を中強度とすると、それ以下の低強度のランニングで、最も海馬が活性化する。
高強度でも活性化するが、すぐに頭打ちになり、その後は効果が落ちる。海馬を刺激したいのなら、スロージョギングで十分で、速歩でもいいという。
前頭前野は中強度のランニングで活性化する。視床下部も活性化するのでストレスを感じ、疲労感が出る半面、快感を覚えることもある。
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